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YUMA MATSUURA - 1st PLACE WINNER, YAGP FINALS 2018. © EMMA KAULDHAR

 ユース・アメリカ・グランプリ - YAGP 2018 New York


今年もニューヨークで行われた、ユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)の決選。日本人出場者の活躍ぶりを中心に、    2018年6月号に掲載予定のアマンダ・ジェニングズのリポートから抄訳でお伝えします。


 ユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)は世界最大のダンス・ネットワークであり、「9歳から19歳のワールド・クラスのダンサーに、経済的、人種的、地理的バックグラウンドを問わずスカラシップ・オーディション、公演、教育機会を提供し、生徒、教師、学校、ダンス・カンパニー、ダンサー、観客を結びつける」という、自ら提唱した使命をみごとに果たしている。 

 1999年にラリッサとゲンナディのサヴェリエフ夫妻によって設立されて以来、YAGPは全世界に活動範囲を広げてきた。今年は、一万人を超える若きダンサーが南極以外のあらゆる大陸から予選に出場。その中からニューヨークでの決選に進んだのは1500人。さらにその中からジュニア(12〜14歳)50人、シニア(15〜19歳)45人が、リンカーン・センターでの最終審査に進んだ。誰もが、翌日のYAGPガラへの出演をはじめ、スカラシップ他の機会を手に入れようと全力投球。そしてジュニアもシニアも、古典作品のソロを、振付に手を加えずに踊る。

 若いダンサーが技術面でも役柄の面でも年齢に合わないソロを踊ることには違和感を感じることも多いものだが、YAGPではそのような心配はない。どの指導者も細部にまで目を行き届かせ、各生徒の良さを最大限に発揮できるソロを賢明に選んでいるからだ。 

 年少の女子では、私は特に『サタネラ』を踊ったエマ・トポロワ(ピッツバーグ・バレエ・ハウス)のコントロールと洗練された体型、『コッペリア』をチャーミングに踊ったレミー・マドレーヌ・ゴインス(米国ジョージア州のインターナショナル・シティ・スクール・オヴ・バレエ、2017年のシェリー・キング優秀賞受賞者)のすぐれた足使いと強いバランス、中島耀(シンフォニー・バレエ・スタジオ)のみごとなトリプル・ピルエットを盛り込んだチャーミングな『ジゼル』、マハラヤ・ティアンティアンコ=クバレス(ウェストレイク・スクール・フォー・ザ・パフォーミング・アーツ、カリフォルニア)のみごとなジャンプや回転が印象に残った。評価の高いペンシルヴェニア州ロック・スクールのエマ・スピレインは、『パキータ』でひじょうに強い回転とバランスを見せた。日本の梨木バレエスタジオの澤野葵は4回転のピルエットで私達を驚かせた上に、すばらしいポール・ド・ブラと上体の使い方、溢れんばかりのチャーミングさがあった。韓国のスヨン・アンは実際の年齢をはるかに超えた成熟とスタイリッシュさをキトリのヴァリエーションで見せた。

 そのうちティアンティアンコ=クバレス以外はトップ12に進み、中島とゴインスはそれぞれ2位、3位に入賞した。1位はフロリダ州のオーランド・バレエ・スクールのジュリー・ローズ・ロンバードが獲得した。

ジュニア男子には、ずば抜けた演技者が何人もいた。全体的な水準が驚くほど高く、回転のバランスもよくジャンプも強い。だが何より印象的だったのは、見せ方が非常に優れており、音楽性にも熟考の跡が感じられたことだ。

日本から出場した林 能矢(CJGバレエスタジオ)、山本あらた(安田尚子バレエアカデミー)、鈴木蒼士(左右木健一・くみバレエスクール)、末次正樹(アリスト・バレエスタジオ)は皆優れたトレーニングと準備の成果を見せた。鈴木のプリエはひじょうに柔らかく質が高いが、これは、年齢と地域を問わずダンサーたちに欠けていると思われるものでもあるだけに、彼がそれを行っているのを見られたのはうれしかった。

1位を獲得したのは、コントロールの効き洗練された『白鳥の湖』を踊ったメキシコのエンリケ・エマニュエル・ベジャラノ・ビダル。そして末次正樹が2位。3位はアメリカのブレイディ・ファラー(スターズ・ダンス・スタジオ、フロリダ)と、わずか12歳ながらプロに近いレベルのミシャ・ブロデリック(マスター・バレエ・アカデミー、アリゾナ)が分け合った。そして、ジュニア部門のグランプリは、客席から大喝采を浴びたアントニオ・カサリーニョという納得の行く結果だった。

シニア女子にも見るべきものが多かった。驚くべき回転の名手が何人かおり、特にマスター・バレエ・アカデミー(アリゾナ)のバーシャ・ローデンは6回転のピルエットを完璧にこなし、みごとにフィニッシュも決めた。ニューヨークのエリソン・バレエのエリザベス・べイヤーは、2度の4回転を自信を持って、やすやすと決め、これも完璧でスタイリッシュなフィニッシュだった。韓国国立芸術大学の魅力的なセオン・ミー・パクは純粋なクラシックのダンサーとして大きな将来性を感じさせた。そしてシュツットガルトのジョン・クランコ・バレエ・スクールの田中美羽は、弾むようなブルノンヴィルの質感を、『ドン・キホーテ』のキトリの友人のソロで表現した。

一位はエリザベス・ベイヤー、そして3位にセオン・ミー・パクとバーシャ・ローデン。2位は上海舞踊学校のグォ・ウェン・ジンが受賞した。

最終審査の長い一日を締めくくったのは、思わず背筋の伸びるようなシニア男子の演技だった。

遠藤バレエの松浦裕磨は、超絶技巧をやすやすとこなし洗練されたパフォーマンスを見せるところが、熊川哲也を思い出させる。小池バレエスタジオの森脇崇行については、私は手元のメモに一言、「驚異的!」と記した。韓国のスヌ・リムとジョフリー・アカデミーから参加した滝口勝巧についても同じ印象だ。何よりみごとだったのは、韓国国立芸術大学のサンミン・リーの純粋なクラシックさ。彼は必ずや、将来大きな活躍を見せるだろう。

実際に一位を獲得したのは松浦祐磨で、サンミン・リーが2位、3位はスペインのコレーラ・ダンス・アカデミーのパウ・プジョルと、リトアニアの国立M.K.シウルリオニ・スクール・オヴ・アートのエドヴィナス・ジャコニスを分け合い、リーは本誌の選ぶダンスヨーロッパ芸術賞を併せて受賞した。

 翌日からは二日間にわたってガラ公演が行われた。一日目の「未来のスターたち」の部で、彼らのうちの何人かが再び観客の前に登場し、アントニオ・カサリーニョが『海賊』を目の覚めるような巧みさと洗練をもって踊り、喝采をさらった。エリザベス・ベイヤーの『エスメラルダ』のこの日も完璧な4回転、そしてセオン・ミー・パクとサンミン・リーの『タリスマン』パ・ド・ドゥはプロそのものといったパフォーマンス等。特に韓国の二人は技術の強さが純粋にクラシカルな芸術性に結びついており、将来が楽しみだ。

 最終日のガラの『グラン・デフィレ』を振り付けたカルロス・ドス・サントス、リハーサル・ディレクターのアレクセイ・モスカレンコとミハイル・チュバコフにも、喝采を贈りたい。たいへん意欲的な演目であり、ひじょうに年少の出演者たち(客席から一斉に感嘆の声が上がった)も含めて端正かつスムーズに仕上げられていた。リハーサルにはどれだけの時間が費やされたか、そして、その間、眠れぬ夜が何日続いたか察して余りあるが、じつに心に残る、これは大きな業績である。

YAGPは世界中のダンスのプロと若いダンサーを結びつけ、教育、コーチング、そして上演のより高い水準を達成している。イギリスからも、さらに多くの学校が参加するよう奨励できないだろうか?近い将来、そうなるだろう。サヴェリエフ夫妻は、これまでにも来る世代のためのレガシーを作り上げてきたのだから。(訳:長野由紀)